2019年 06月 08日
アポロン・ミューザゲート弦楽四重奏団 |
第一楽章アレグロ・モルト・モデラート、第三楽章アレグロ・ヴィヴァーチェ、そして第四楽章はアレグロ・アッサイ。シューベルトはなにゆえ、そんなに早い曲想を連続させたのか。まるで何かに追われ、逃げるかのようにメロディーは疾走する。弦楽四重奏14番はゆったりと、限りなく変奏が繰り返される<死と乙女>。そして今日の最終演奏曲は15番。この曲は29歳の6月の作曲、やがてあのドラマチックな弦楽五重奏D956を残し彼は逝ってしまった。
今日の紀尾井ホールはアポロン・ミューザゲートという四重奏団、その名前は興味深い。ギリシャ神話の九人のムーサを束ねるのは音楽の神アポロ。ムーサは芸術の神々、つまり、ミューザゲートとは音楽を超えた多彩なジャンルを取り込んだ四重奏団ということだろう。そんな観点からは彼らがシューベルトを得意としていることはとてもよくわかる。何故なら、個人的印象だがシューベルトでは感情より空間を感じるからだ。彼の音楽はいつも物語、詩よりドラマを感じる。それは歌のないオペラ、そんな時間体験が今日の紀尾井ホールだ。
演奏の最初はシューベルトの14歳の四重奏曲、彼は初期に四重奏曲ばかり12も作曲したといわれるが、チェロを弾く父の元、彼はヴィオラを弾き、様々な歌のないオペラを目指したのだろう。そんな思いから第一番を聴き終わると、その印象は知らない街をあてもなくさまよう後のシューベルトが見えてくる。それは叙事的なリズムと抒情的メロディの重なり、そのシークエンスが今日の終曲15番へと引き継がれたのだ。
by leporello1
| 2019-06-08 16:09
| music
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