2018年 01月 20日
欲望の資本主義 |
経済学は未知の分野だが、昨年、TVで見たチェコのトーマス・セドラチェクの話が面白かったので読んでみた。
彼が書かれた書籍は「善と悪の経済学」。今回読んだのはそれではなく、TV番組のサマリーのようなもの。
数字も数式もアルファベットも登場しない、まさに素人用の読み物、大阪大学の安田氏と経済同友会の小林氏が対談されている。
羽田に降り立った際、セドラチェク氏は40Lサイズ小さなリュック1つ、東京の街を歩く彼は「大きな子供」のようだったそうだ。
日本橋の立ち食いそば屋の企業努力を宣言する張り紙を見て、「こんなに安くて美味しく、これ以上何を努力しようというのだ?」と首を傾げていた。と別項でディレクターは書いている。
このコメントは意味深い、チェコで育ったセドラチェクは需要不足は経験しているが、この対談での彼の主張はむしろは需要より問題なのは供給過剰、過剰消費にあると明解に語っているからだ。
彼はどこまでも成長を追い続ける、成長資本主義そのものに大きな懸念を持つ経済学者。
問題は資本主義にあるのではなく、成長を煽るトレンド経済にある。
現代の問題はケインズの美人コンテスト(GDP成長率)ではなく、いつ訪れるか知らぬ経済危機にあると言うのだ。
つまり経済はトレンドではなくサイクル。
危機は経済サイクルの一部であって、トレンドで防ぐことは出来ない。
そんな中、多大な財政赤字のままマイナス金利にはしり、GDP成長率にのみ関心を抱く現在の我々は、国の債務は国民の家計で賄えるという政治家のポピュリズムに踊らされているのかもしれない。
安田氏との対談には映画「マトリックス」「インセプション」「ロード・オブ・ザ・リング」が登場する。
経済は今や、リアルなモノだけに関わっているのではなく、ヴァーチャルな分野、イマジナリーパートとも関わっている。
今後出てくる問題はAIが人間の能力を超えるとされるシンギュラリティ、債務超過が何をもたらすかは全く見えないとセドラチェクは語る。
映画「マトリックス」では最初は楽園だったが、人間は堕落し、やがて「マトリックス」は崩壊する。
人は楽園に行きたいと願うが、いざ楽園に行くと逃げたくなる。
搾った牛乳をいかに有効に使うかは牛(資本主義)の問題ではなく、私たち(人間)の問題、と語り対談は終わった。
by leporello1
| 2018-01-20 11:46
| book
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