2012年 12月 31日
小沢征爾さんと、音楽について話しをする 小沢征爾X村上春樹 |
それは丁度ボク自身がブラスバンド部でトロンボンを吹いていた頃のこと 。
ブザンソン国際指揮者コンクールに優勝し、ヨーロッパ中をバイクで走り回るやんちゃな棒振り日記は、中でもとてつもなく身近で生々しく面白く、いつもカバンの中に潜ませていた。
そんな時代からうん十年、今度はマエストロセイジはなんと村上春樹と対談した。
楽譜を読むマエストロ、長編を練る小説家、どうやら彼らふたりは朝4時が勝負のようだ。
そして、まわりの人を明るくし、信頼しながらも深い孤独の中を生きざるを得ない音楽家と小説家。
その話はやんちゃだが深い、気楽だが濃い、難しくはないが高い。
クラシックファンの一人として、今や小澤音楽はボクの音楽とはいささか異なるが、その好ましい人間的魅力は彼の武者修行時代と全く変わらない。
取り敢えず読み飛ばしたどこかでアルペジオという音楽用語が登場したように思うが、この対談集の印象はまさにアルペジオと言えるようだ。
対話はテーマとなる主和音を共有し、微妙に展開されるふたりの分散和音の絡まりが何とも美しく興味深く面白い。
この対話集の白眉は、指揮者が小説家との思考回路の相違に気づき、それを否定するのではなく真正面から受け止める場面だろう。と選評を書く堀江敏幸。
村上「物語みたいにして音楽を考えていくというのではなく、ただ総体としてそのまんまぽんと受け入れるということですか?」
小澤「(しばらく黙考する)あのね、あなたとこういうことを話していて、だんだんわかってきたんだけど、僕ってあまりそういう風にものを考えることがないんだね。僕はね、音楽を勉強するときには、楽譜に相当深く集中します。だからそのぶん、というか、ほかのことってあまり考えないんだ。音楽そのもののことしか考えない。自分と音楽とのあいだにあるものだけを頼るというか・・・・・」
という部分がどうやらその場面。
図書館での仕事のつもりだったが、雑誌「考える人」が面白く、朝から全く捗らない。今月号の、この村上春樹の「小澤征爾さんと、音楽について話しをする」の抄録、沢木と角幡の対談「ノンフィクションの地平lは特に面白い。もっとも前書、貸し出そうと思ったら12人待ち。読書の秋ですね。
by leporello1
| 2012-12-31 03:15
| book
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