2012年 11月 14日
映画・白夜 |
恋に恋する男の話など、オペラにはつきものと思われるだろうが、そんなことはない。しかし、最近の小説や映画には多いのかもしれない。
70年代に70台のロベール・ブレッソンが作った「白夜」をユーロスペイスで上映中と知り、観てきた。
館内は若い男性が多いようだ。
評判どおり良くできた映画だ。
ぼくの好みでいうと音と音楽が良い。
ブレッソンが描く大都市パリを象徴するものは、煌々とした光ではなく音なのだ。
この映画では靴音、クルマの疾走音と水音、セーヌを渡る水上ボートからの、あるいは河岸で演奏されるギターとパーカッションと女性の唄が画面をリードする。
しかし、物語はいただけない。
そう、原作はドストエフスキー、ボクは彼の小説が好きではない。
殺してはいけないと自覚しながら何故、老婆を殺すか、戦争でもないのに。
そんな「罪と罰」に高校時代、辟易した。
だから、当然、原作は読んでいない。
ジャックと称する主人公、彼はきっと恋に傷つくことはないだろう。
いや、恋されることもないかもしれない。
彼にとって女性はうつくしく、かわいらしく、はかなげではあるかもしれないが、リアリティある実態ではなく、言葉に過ぎない。
テープレコードの中の音としてのみの存在感なのだ。
「白夜」という題名は当たっている。
ブレッソンがこの映画で意味するもの、それは恋ではなく、スクリーン、男がよく見る幻像だ。
美しくさえあれば誰女でもよい。
ジャックは決して不誠実ではないが、恋する事は決してない。
きっと恋されることも無いだろう。
by leporello1
| 2012-11-14 22:59
| Movie work
|
Comments(0)