2015年 12月 03日
映画・パリ三区の遺産相続人 |
かっては貴族館が立ち並んだパリのマレ地区、セーヌの流れも近いパリの中心だが、いまだ静かなその街並みの一画に中庭を囲む瀟洒なアパルトマンが建つ。住まうのイギリス生まれの老婦人と、もはや若くない、いまだ独身の娘との二人。
アパルトマンは老婦人のかっての恋人であったアメリカ人が所有するもの。しかし、フランスの独特の不動産制度により、その二人の女性の住まいと生活はなん人も侵すことが許されない。そんなアパルトマンに50代半ばのあまりパッとしない独身男がニューヨークからやってくる。男は父の死によりこのアパルトマンを相続した新しい所有者なのだ。
長い前ふりだが、映画のポイントはこの瀟洒アパルトマンでもなければの不動産所有の制度でもない、そこに生活し続けてきた二人の女性の恋のカタチだ。しかし、それを単によくある不倫物語と言ってしまえば、映画は直ちにディエンドとなってしまう。不倫とはなんとも無粋な言葉だが、映画もそんな言葉には関りがない。物語はもともと舞台劇として成功したもの。その舞台の演出家があえて映画として構成しなおしたのは、現代社会の恋のありようを再び、深遠より描いてみたかったのだろう。
by leporello1
| 2015-12-03 21:10
| Movie work
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